Xさんは親から会社事務所として使用している土地、建物を相続しました。

それを売却するときに、建物が他人の土地に一部越境していることがわかりました。また逆にその他人の土地上の建物が、Xさんの土地に越境していることもわかりました。

お互いに占有している部分を交換しようと持ちかけましたが、相手は応じてくれません。

(1) 裁判

Xさんの建物が越境して占有している部分について、時効取得による所有権移転登記手続を行なえ、との裁判を起こしました。

長期にわたる裁判でしたが、この時効取得による所有権移転登記手続きを求める訴えは、申立どおり認められました。

(2) 分筆登記と判決による登記

時効取得したのが、一筆全体であれば、登記は簡単です。判決による登記を行えばそれで済みます。この件で難しいのは、時効取得したのが一筆の土地の一部であることです。まず、分筆登記を先行させる必要があります(そうしないと、所有権移転をする土地が登記簿上存在していないことになります)。

この場合、まず、所有権の移転登記手続を命じる判決が出ていますので、それを実現するために、代位による分筆登記申請が認められています。ところが、法務局はそう簡単には分筆登記を認めてくれません。法務局独自の審査権限も認められていますので、分筆部分(時効取得部分)と現地調査の結果が一致しない、ということで却下されることもあり得ます。

この事件の場合も、分筆登記申請については、法務局とは激しいやりとりがありましたが、最終的には実地調査の結果も判決と一致するということで事なきを得ました。この後は、当該分筆地について所有権移転登記を行って事件は完了しました。