Xさんの祖父は、自宅近くの土地の名義人です。

Xさんの祖父は60年以上も前に亡くなったのですが、村落の人たちが使っている土地であるということもあり、不都合もなかったことから相続登記をしていませんでした。

しかし、登記申請を促す通知*が法務局からきたことからやはり、この際、自分名義にしておこうと考えました。法務局から届いた通知をみると、相続が繰り返されており、生存の相続人は、11人でした。付き合いのある人もいますが、まったく付き合いのない人もいます。どう進めていったらいいでしょうか、との相談がありました。

*「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」に基づいて、当該地区では、法務局から「長期間相続登記等がなされていないことの通知及び相続登記相談窓口の案内について(お知らせ)」の文書が届きました。

(1) 対応策

数次の相続が発生していたのですが、一次相続人のうち5名のうち4名の系列の人とは、人間関係もあり、協力してもらえる関係にありました。

そこで、この4名の系列の人から、一次相続人のXさんの父に、他の3名の一次相続人が持分を譲渡したことを証明する「相続分譲渡証明書」を作成してもらうことができました。

なお、事例5と違うのは、相続分譲渡を受けたものが、相続人の一人である、ということです。これで、登記はずっと楽になります。

(2) 登記申請と遺産分割調停

かなりややこしい相続分譲渡ですが(数次にわたる相続人が、一次相続の相続分譲渡を証明することになっています)、この証明書をもって、大部分の持分をXさんの父に、残りを他の1名の一次相続人の名義にする法定相続の登記を行いました。さらに父は死亡していましたので、その相続分をXさんが単独相続するという登記を行いました。

その結果、協議の相手方も絞られてきましたので(他の一次相続人が死亡していますのでその子が相手方になります)、Xさんから家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。

相手方も、特に争われず、その調停調書をもって、Xさんの単独所有にすることができました。