Xさんは、自宅近くの土地を管理しています。しかし、そこは亡夫の父親(義父)名義になっています。

義父は戦後すぐ亡くなり、夫も40年以上も前になくなっていますが、固定資産税等は払い続けてきました。なんとか整理したいと思っています。幸い現在生存している相続人自体はそれほど多くはなく、遺産分割調停を申し立てる予定です。

ここで一つ問題がありました。一部の持分につき、Xさんは20年以上前に相続人の一人であるYさんから公正証書により相続分譲渡を受けていますが、登記には反映されていません。Yさんは亡くなっています。

これはどうなるでしょうか、と相談がありました。

(1) 相続登記と持分移転の登記

遺産分割調停を申し立てる前提として、まず、現時点で可能な法定相続の登記を行おうということになりました。

名義人の義父の死亡以降も9人の相続人がなくなっていましたが、Xさんの子や孫等の協力も得て、9件の法定相続登記を行いました。Yさんもこの登記の過程で、持分権利者として出てきます。この持分を相続分譲渡によりYさんからXさんに移転登記をすることになります。公正証書があるのだから・・・と思いますが、そう簡単ではありません。

(2) 対応策

相続分譲渡の場合、譲受人も相続人であった場合はそれほど難しくはないのですが、第三者への相続分譲渡の場合は(Yさんの相続についてはXさんは第三者でした)、一旦譲渡をする人への登記をしたうえで(ここまでは(1)のとおりできました)、今度は譲渡人と譲受人との共同申請により、持分移転登記をすることになります。Yさんが亡くなっていますので、Yさんの相続人全員に登記申請に協力してもらわなければなりません。

そこでYさんの相続人を調べると18人もの人がいました。おそらく、この18名の方は、そのような土地の存在すら知らない、と思われました。事情を説明して印鑑証明書付の委任状をもらったりするのは不可能です。これも、裁判をするしかいないな、という結論になりました。

(3) 裁判

18人の方には、代理人弁護士として、あらかじめこういう訴訟を起こさざるを得ないのでご了解ください、という書面を送付したあとで、相続分贈与による持分移転登記手続きをせよ、との訴訟を起こしました。

争われる方は一人もなく、申立通りの判決がでました。