Xさんは、祖父名義の不動産を管理していました。父もなくなったため、祖父の子である父の兄弟姉妹と遺産分割協議をしました。祖父から父が単独相続し、それをXさんが相続することにし、父の兄弟姉妹(おじさん、おばさん)には代償金を支払う、ということで合意しました。

そこで、Xさんは遺産分割協議書を作成しようとしたのですが、一部の人が署名捺印してくれません。一人でも欠けると、遺産分割協議が成立せず、したがって、登記もできません。

なんとか、登記をできないだろうか、との相談がありました。

(1) 協力要請と対応策

遺産分割協議書に署名、捺印してくれない人に対し、相当の額の代償金を支払った証拠はありました。そこで、もう一度協議書の作成に応じてもらえない人に対し、Xさんの代理人弁護士として丁寧に説明して協力をお願いしました。

しかし、本音のところで協力するつもりがないことがわかりましたので、訴訟しかないな、との結論にいたりました。

(2) 訴訟

そこで、「遺産分割協議が成立していることの確認訴訟」を提起することになりました。

めったにない訴訟なので(逆の「遺産分割協議無効確認の訴え」はよくありますが、この事件はそれとは反対となります)、訴状提出の段階で、裁判所からは「訴えの利益はなにか」との質問もありましたが、これは、事前に法務局とも協議の上、判決がでれば相続登記ができる、との感触を得ていました。

結果は、相手方に代理人弁護士がつき、遺産分割協議書を作成する、ということで訴訟外の和解が成立しました。書面をもらって、Xさんへの相続登記を申請し、訴えは取り下げて終了しました。

(3) めったにないケースとは思いますが、やはり、金銭の支払いと書類の作成は同時に行なうべきだ、ということを思い知らされました。