1 先祖が他人と土地を共有していた

Xさんの先祖が他人(Yさん)と土地を共有していました。Xさんは自分で相続人を調査し、遺産分割協議の上単独相続しました。しかし、共有者の他人の持分は、長く相続をされないまま放置されていました。

大部分の持分は自分のものになっているにも関わらず、他に共有者がいることから、このままでは自由に使用、収益、処分できません。

どうしたらよいか、との相談がありました。

(1) 相続人調査

まず、Yさんの相続人を調査しました。やはり、数次の相続*があり、現存者は37名もの多数にのぼりました。

*「数次の相続」というのは、相続登記をするまえに、相続人がなくなる、ということが繰り返されているケースをいいます。登記名義人がなくなったあと、何世代にもわたって、相続が発生していることがあります。

(2) 方法の検討

この場合、共有持分権利者はXさんとは他人ですから、家庭裁判所で遺産分割調停をするわけにもいきません。また相続人の数も多いので、個別に売買契約を結ぶというのも困難です。

そこで、Yさんの相続人全員を相手方として共有物分割訴訟を提起することになりました。

(3) 裁判

この事件の場合、戸籍はあるが、住民票は職権で抹消されており行方不明の人がいました。手掛かりもなく、探し出すこともできなかったことから、公示送達の申立をしました。

最終的には、代償分割(Yさんの相続人の持分に対して金員を支払う)の判決により、XさんがYさんの持分を全部取得できることになりました。

(4) 登記

この件も、まず、①代位の申請により20件近くの相続登記を行い、そのあと②判決によるXさんへの移転登記を行って、最終的にXさんの単独所有になりました。