1 親が孫に不動産を遺贈

Xさんの母親は、Xさんの妹家族と同居していました。母親がなくなりましたが、その所有不動産を妹の子(甥のYさん)にすべて譲るという公正証書遺言を残していました。

Xさんから、遺留分減殺請求をして、不動産の持分を自分名義にしたい、という依頼がありました。

(1) 裁判

裁判は、Yさんを相手に、遺留分減殺に基づく持分移転登記手続きを求める訴訟となりました。これは判決で認められました。

(2) 登記の検討

この件で難しかったのは、むしろ登記の方です。というのは、この事件では、Xさんの母親からYさんへの遺贈による登記がなされていなかったのです。したがって、まず、①Yさんへの遺贈登記を行ったうえで、②Xさんへの判決による持分移転登記をすることになります。

ここで問題になるのは①の登記です。Yは相続人ではありませんから、単純に代位による相続登記ができるわけではありません。相続人以外への遺贈の登記は公正証書があっても共同申請になります。ところが、Yさんや他の相続人は登記に協力をしてくれません。どうしたものか、と考えていましたが、公正証書遺言には、遺言執行者が定められていました。この遺言執行者が被相続人たる母親の代理人として実質上の登記義務者となり、登記権利者のYさんにXさんが代位して登記申請をする方法をとりました。

(3) 登記申請

①の登記が終われば②の登記は、判決による単独申請で行えます。無事にXさんに持分移転登記ができました。